美術品と暮らす
〜季節のコーディネート〜

不確かな時代だからこそ、アートのちからを信じます

 



 
かつて床の間を飾ったアート作品は、日本人の生活の一部でした。アートは今も生きる力の源泉であり、私たちを人の営みの歴史と文化に繋いでくれます。
そんなアートのちからを孔雀画廊は信じ、日々、みなさんのこころとくらしを豊かにする作品を探し求め、時代に合ったコーディネートも提案しています。
「やすらぎ」「刺激的」「静寂」「おもしろい」「楽しい」とアートがもたらす力もさまざまですが、より幅広い提案ができればと思っています。
コロナで人の生活がすっかり変わる中、アートの未来も見えていませんが、アートが人の心の支えになることだけは変わらないと信じています。

「白蝶々」 川井健司

「Untitled」 アントニ・クラーベ

「PAPIER FROISSE」 アントニ・クラーベ

秋といえば、芸術の秋。芸術には、物語を生み出す力があります。作家が絵に託した物語もあれば、見る側が紡ぎ出す物語もあります。いづれにせよ、人は物語を好みます。現代作家の作品や抽象画は、抽象的であるが故に見る側に様々な想像を掻き立ててくれます。誰のために、何のために描かれたのかしら?そんなことを想像しながら、作品の細部を見ていくと、作家が込めた思いやヒントが見つかることも。この秋、現代作家の作品を眺めながら、探偵気分であなたオリジナルの物語を一編、想像してみるもの秋の洒落た時間の過ごし方かもしれません。

秋になると、緑が一気に黄色や赤に色づき、季節の移り変わりを強く感じさせてくれますね。紅葉は、春の花々とは違った去りゆく哀愁の美への高揚感があります。秋の情景と心象に合う絵は、やはり風景画や重厚な油絵ではないでしょうか。芸術は、一見マイナスと取られそうな、悲しみ、寂しさ、切なさ、死、老い、醜さ、絶望にも美を見出し表現します。これらは逆に、愛、美、喜び、生、若さ、楽しさ、安心を感じる上で、なくてはならないもの。あなたは、これらの対比をどれだけ1つの絵から感じとることができるでしょうか?ちょっとしたゲームだと思って、ぜひお茶を飲みながら、ゆっくり絵の中に描かれた本来の心象風景を眺めて物思いにふける時間をとってみてはいかがでしょうか。

「錦秋」 塩出英雄

「ソローニュ平原」ジャン=バティスト・カミーユ・コロー

「ソローニュ平原」ジャン=バティスト・カミーユ・コロー

「少女」 織田廣喜

「ミセレーレ たえまなく苔うたれ・・・」 ジョルジュ・ルオー

「鳩三羽」脇田和

「9月」ジャン=ピエール・カシニョール

「雨後」藤谷和春

日本の和の世界では、常に季節を先取りして花や絵を選び、季節が過ぎる前に装いを変えますよね。それも素敵ですが、型にはまらずご自身のセンスで選べるのが現代というもの。夏着物でも、雪輪模様で涼しさを演出することがありますよね。このカシニョールの版画は、タイトルも「9月」。夏の強い日差しを感じつつもエレガントな佇まいのレディーが夏にピッタリの作品です。絵の中のグリーンと赤をテーブルにも加えて、いっそうゴージャスで爽やかに。他にも、海や山を題材にした絵や、現代アートをクールに演出して取り入れてみても素敵ですね。大事なのは、遊び心。ご自身のセンスで夏らしく取り入れてみてください。

夏といえば、鮮やかな花が夏の暑さを和らげてくれます。特に水辺に咲く花や、紫色の花などは涼しさを感じさせてくれますね。首夏花といえば「初夏の花」という意味ですが、山口蓬春の「首夏花」は、夏の間ずっと飾っていても違和感を感じない素敵な絵です。菖蒲でしょうか、どことなく水を感じさせてくれるみずみずしさがあります。4月から夏真っ盛りまでは飾っていても良いのではないでしょうか?ホオズキの掛軸も蝶がフワッとホオズキにとまる様子が描かれることで、どことなく、夏休みの田舎の風景を思い出すようです。他にも爽やかな夏に合う花の絵は多いですね。当画廊で扱っている夏に合う花の絵をご紹介します。

コーディネート:佐藤由美子

「首夏花」山口蓬春

「ほおずき」 川﨑小虎